徒然(電気雑記)

 

7 IC製造前工程

7.a 洗浄(cleaning)

洗浄はウエーハ上のゴミ、有機物、無機物の汚染を除去する目的で行なわれる。まずはウエーハが供給され、製造工程に流す最初の段階で行なわれる。この最初に行なわれる洗浄法は従来から多く取り入れられているRCA洗浄法がある。これは、まず、シリコンウエーハをSC−1液(H2O:NH4OH:H2O2、5:1:1)80℃の槽に10分程度入れ有機物汚染、金属汚染を除去し、これを超純水で洗浄する。次にHF:H2O2、1:50 の液で前工程でシリコンウエーハ上に生じたシリコン酸化膜を除去する。この後、再び超純水で洗浄を行い、ついで、SC−2液(H2O:HCl:H2O2、6:1:1)80℃の槽内で残留の金属汚染を除去し、超純水で洗浄し、乾燥を行なう。超純水による洗浄は当初は槽内にウエーハを入れ超純水を注ぎ込み、槽をオーバーフローさせて洗浄する方法が取られていたが、この方式では水の量の割りに洗浄速度が遅いことから、槽内に水を供給し、槽を水が溢れた時点で底から急速に水を抜き、再び水を供給して槽を水で溢れさせるという操作を繰り返すダンプ方式が採用されるようになった。そして、水をウエーハ表面から乾燥させる方法は当初はウエーハをカセットに多量に装着し、回転させ、遠心力により水を飛ばして急速乾燥させる方法(スピンドライ:spin dry)が取られていたが、回転時の飛沫による再汚染や回転時の空気との摩擦による静電気の発生、ウエーハの大口径化に伴う支持の仕方などの難しさなどが生じた。そこで、注目されてきた方法としてIPA(イソプロピルアルコール:isopropyl alcohol)による蒸気乾燥である。これはIPAの蒸気槽にウエーハを垂直に挿入し、ウエーハ表面でIPAが液化し、流れ落ちる際に付着している水分を取り去る方法である。これらの方法以外にも高圧エアナイフによる方法や真空乾燥等もある。

7.b ウエットエッチング(wet etching)

ウエットエッチングは薬品によりシリコン、酸化膜、窒化膜、金属膜(Al、Au、Ti、Wなど)などを腐食させて取り除く方法を言う。これに対して、ドライエッチングと言う方法があるが、これは後述するプラズマガスにより腐食させて取り除く方法である。図7−1で示すようにウエットエッチングは単結晶の結晶方向によりエッチング速度がことなるため異方性エッチング(anisotropic etching)になるが、ほとんどの場合はどの方向にもエッチング速度が同じのため等方性エッチング(isotropic etching)になる。ドライエッチングはエッチング条件により等方性も可能であるが、図のようにレジスト膜とほぼ同じ形状で深さ方向にだけエッチングできる極端な異方性が可能である。このようなことから微細化のためのエッチングはドライエッチングの方が適している。しかし、ドライエッチング(dry etching)の方は静電気や物理的ダメジを素子に与えやすいという欠点はある。

図7−1 エッチング形状

図7−2 フォトリソグラフィ工程

7.c リソグラフィ(lithography)

シリコンウエーハ上に集積回路を形成する上で必要な各工程の加工を行なうには必ず、パターンに合わせて薄膜をエッチングなどの加工する必要がある。薄膜のエッチングをするときは残す部分をエッチングに耐える膜で保護してやる必要がある。この保護する膜をレジスト(resist)と呼ぶ。そして、必要な部分にレジストを残す工程をリソグラフィと呼んでおり、一般的な方法は図7−2に示すような工程を経る。まず、ウエーハを100℃以上に加熱しウエーハ上の水分を完全に除去し、ウエーハ上にレジストとの密着度を強化する強化剤を塗布してやる。塗布の方法はウエーハを高速回転(毎分数千回転)してやり中心付近に溶剤を点滴して遠心力によりウエーハ一面に広げて均一なレジスト膜を形成する。この場合のレジストは感光作用を持っている。レジスト塗布後プリベーク(prebake)として100℃以上の温度に過熱し、膜の感度や形状などの性能を向上させる。この後、写真の白黒ガラス乾板のようなフォトマスクをレジスト上に置き、その上から平行光を照射してレジストを感光させる。この後、写真と同じように現像を行なう。この場合は図に示されているように感光した部分が現像の溶剤により溶解する。このように感光した部分が現像で溶解するレジストをポジレジスト(positive resist)と呼んでいる。この場合の感光した部分が溶剤に溶けやすくなるのは感光によりレジストの高分子が小さい分子に分離し溶剤に溶けやすくなるためである。これに対して、感光しない部分が現像で溶解するレジストをネガレジスト(negative resist)と呼ぶ。この場合は感光により感光部分が架橋反応が起こり比較的短い分子が長い高分子になり溶剤に溶けにくくなるためである。微細加工で使われているレジストはポジレジストである。現像後レジストを薬品やプラズマなどに耐性を強くするために100℃以上に加熱するポストベークを行なう。以上のような工程でリソグラフィ工程が行なわれる。この工程に使われるマスクは当初は写真で使われるものと同じエマルジョンガラス乾板が使われていた。現在ではガラスは熱膨張の非常に少ない紫外線の透過率の良い溶融石英ガラスが使われており、遮光膜はクロムと酸化クロムの複合膜が使われている。ガラス乾板の遮光膜の回路パターン形成には電子ビーム露光機が使われている。露光機については当初は図7−2で示されているようにウエーハ上に回路パターンが形成されているマスクを直接接触させるか数μm離した状態にして、その上から平行光線を当てマスクパターンをウエーハ上に転写するコンタクト方式が使われた。しかし、この方式はマスクとウエーハとの接触によりマスクに傷がつく可能性があり、このような欠点を防ぐ方法としてマスクをウエーハから大きく離し、レンズを使いマスクパターンを等倍でウエーハ上に投影するプロジェクション(projection)方式が採用された。そして、更に開発され図7−3に示すようなステッパー(stepper)方式が現在では主流になっている。これは数チップ分の回路パターンを5倍か10倍の大きさで形成したパターンマスクをレンズでウエーハ上に5分の1か10分の1に投影し、ウエーハを左右に1ステップごとにスイープしウエーハ前面に回路パターンを投影する方式である。この方式であるとマスクに形成する回路パターンは5倍か10倍に拡大するので、パターン精度が良くより微細化がしやすくなる。また、マスク上のゴミの影響は5分の1か10分の1の大きさになるため、ゴミの点でも有利である。このような利点もウエーハ支持台のステップ移動の精度が非常に良いことに支えられる。露光機の光源は一昔前は水銀ランプの紫外線のg線(波長436nm)が使われていたが、さらにi線(365nm)が使われ、最先端ではKrFエキシマレーザー光(波長248nm)が使われている。波長が短くなるのは露光機に使われるレンズの解像度(R:resolution))は次式で決まるためである。

 R=0.8λ/NA   λ:波長  NA:レンズの開口数(大きさ)      (7・c・1)

この式から解像度は光源の波長に比例するため、微細化すればするほど波長の短い光源を使う必要がある。ただし、レンズ焦点深度(focus depth)δは次式で決まる。

δ=λ/2(NA)2                                  (7・c・2)

この式から焦点深度δは波長に比例するため波長が短くなればなるほど焦点深度も短くなるためウエーハの平坦度に対して厳しくなる。電子ビーム露光機(electron beam exposure machine)は電子顕微鏡と同じような原理で動作し、マスクを必要とせず、コンピュータでパターン設計されたデーターで直接コンピュータ制御により走査でき、、非常に微細化に優れているがウエーハ全面に露光するのに非常に時間がかかる(スループットが悪い)ため、主にマスク製作に使われている。

図7−3 ステッパの原理図

図7−4 MBE概略図

7.d エピタキシャル成長(CVD法、MBE法)

バイポーラICにおいては素子間分離のためP形シリコン基板にN形単結晶シリコン層を10μm程度成長させるホモエピタキシ(homoepitaxy)とMOSICなどではトランジスタの浮遊容量低減やパンチスルー軽減のためサファイヤ基板上に単結晶シリコン層(SOS:siricon on sapphire)を成長させるヘテロエピタキシ(heteroepitaxy)などがある。エピタキシャル層の形成方法には最も多く使われるCVD法とMBE法がある。

CVD法(chemical vapor deposition):この方法でシリコンエピタキシャル成長させるにはシリコン源としてシラン(SiH4)ガスと水素ガスとの混合ガスをシリコンウエーハのある1000℃程度の石英管炉内に送るとウエーハ上で熱分解し、Si単結晶が成長する(約0.5μm/min)。N形シリコンを成長させるにはアルシン(AsH3)ガスまたはホスフィン(PH3)ガスを添加する。またP形シリコンを成長させるにはジボラン(B2H6)ガスを添加する。この場合、多量の水素ガスを排気する必要があるため多量の窒素ガスを混合させて排気する。

MBE(molecular beam epitaxy):MBE法は図7−4に示すような形状のステンレス容器内を10-8Paの高真空にしてシリコンをるつぼに入れ、シリコンのように融点が高温度の場合はこれに電子銃から電子ビームを当て加熱して融解し蒸発させ、加熱したウエーハに蒸着させエピタキシャル成長させる。融点が低い物質に対してはヒータ加熱で蒸発させる。このような高真空中では酸素などの残留ガスの影響も少なく数原子層の制御も可能である。ここで、真空値を表す値は現在はPa(パスカル)で、以前はTorr(トール)である。この間の関係は Pa=7.5×10-3Torr である。また、真空中での原子の平均自由行程(mean free path:衝突から次の衝突までの距離)Lは L=5×10-3/真空度(Torr) である。

7.e 絶縁膜形成

絶縁膜はゲート酸化膜、素子分離、拡散保護膜、配線層間絶縁膜、コンデンサ容量膜、表面保護膜などに必要である。この膜で代表的なものは酸化膜、窒化膜、有機物膜などがある。これらの膜の形成法としては熱酸化法、熱窒化法、CVD法、有機物膜の場合の塗布法などがある。

熱酸化膜(thermal oxidation film):図7−5に示すような炉を900℃〜1150℃に加熱し、ウエーハを石英管内に置き、ガス導入口から酸素ガスを送り込み、シリコンを酸化させシリコン酸化膜(SiO2)を形成する。このように酸素ガスのみを導入し酸化させる方法をドライ酸化と呼んでおり、これに対して酸素ガスと水素ガスを1:2の割合で送り込み炉の導入口に近いところで水蒸気(H2O)を作りこれをシリコン表面に送り参加させる方法があるこの方法をウエット酸化と呼んでいる。シリコン酸化膜の形成原理はシリコン表面で酸素と反応することで酸化させるため、膜の成長と共に膜を酸素が通過し、通過後酸化膜とシリコンとの境界面で酸化反応する。このようなことから酸化膜の成長膜厚x0は次式で表される。

x0=(A/2)[{1+(t+τ)/(A2/4B)}1/2−1]                 (7・e・1)

ここで、A=2D(1/ks+1/h) ; B=2DN*/Ni ;τ=(xi2+Axi)/B ;  ks:酸化反応係数  ; h:固体内の濃度により表した気体の質量輸送係数 ; D:酸化膜中での酸素の拡散係数  ;Ni:酸化膜中でのシリコン面上の酸素濃度 ;N*:酸化膜内表面近傍での酸素濃度 ;xi:初期酸化膜厚       以上の式から酸化時間が短く十分薄い膜厚の場合、成長膜厚x0は次式になる。

x0=(B/A)(t+τ)                                   (7・e・2)

この場合の式を直線則(linear law)と呼び、膜厚はシリコン表面での反応に大きく依存しており、反応律速(reaction control)の状態である。また、酸化時間が長く、膜厚が十分厚い場合、成長膜厚x0は次式になる。

x02=Bt                                          (7・e・3)

この場合の式を放物線則(parabolic law)と呼び、膜厚は酸化膜中を拡散してシリコン表面到達する時間に依存しており、拡散律速(diffusion control)の状態である。酸化膜の成長速度は温度が高ければ高いほど速く、ドライ酸化よりウエット酸化の方が10倍ほど速い。これらの熱酸化において、他の条件を変えることにより、いろいろな目的に応じる方法が開発されている。酸素に塩素、塩酸、トリクロエタン、トリクロルエチレンなどを加えることにより、重金属の影響を減少させる。また、ゲート酸化膜のように微細化が急激に進むことにより、非常に薄膜化(数10nm)が進んでいる。この目的には酸素濃度を薄める方法がある。その方法は分圧酸化(希釈酸化)と言い、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスで酸素を希釈し、酸素分圧を10-1〜10-3気圧の状態で酸化させる。また、RTO(rapid thermal oxidation)法がある。これは、図7−6に示すように容器中にウエーハを置き容器内に酸素または清浄な空気を送り込みタングステンまたはハロゲンランプで急速に加熱しウエーハを酸化させる方法である。従来での加熱法ではウエーハの炉内への挿入、炉外への引き出しに時間がかかり短時間での酸化が困難であったが、この方法によると急速加熱が可能であるために短時間での酸化の制御性が良く酸化膜の薄膜化が容易である。一方、酸化膜の成長速度を大きくする方法に高圧酸化法がある。これは加熱炉を密封されたステンレスの高圧容器内に入れ、石英管内にウエーハを入れ、10気圧の高圧酸素を送り込みシリコン酸化膜を形成する。このようにすることにより、大気圧の5倍の成長速度を得ることができる。酸化膜の成長速度はシリコンの結晶面にも依存し、(110)>(111)>(100)の順で成長速度が速い。熱シリコン酸化膜は非常に安定な絶縁物であり、当然のことではあるが、シリコンとの界面において非常に適合性が良い。このため、ゲート酸化膜には必要不可欠のものである。

図7−5 熱酸化膜炉

図7−6 RTO法

熱窒化膜(thermal nitride film):1050℃〜1200℃に加熱された石英管にウエーハを置き、これに窒素またはアンモニアガス(NH3)を送り込み反応させることにより窒化膜(Si3H4)が得られる。しかし、得られる熱窒化膜の膜厚は数nm程度である。この理由は窒化膜の膜質が非常に緻密であるため、窒化膜内の窒素の拡散が非常に遅いためであり、実用的ではない。

CVD法(常圧CVD、減圧CVD、プラズマCVD)

常圧CVD(atmospheric pressure CVD):これは大気圧中の炉内のウエーハ上で化学反応させて薄膜を形成する方法である。シリコン酸化膜の場合 シラン(SiH4)+O2ガス を400〜500℃の温度で加熱するとSiO2+2H2と反応して、ウエーハ上にシリコン酸化膜が形成される。また、これにホスフィン(PH3)を加えるとPSG(phosphosilicate glass)膜が得られ、これにジボラン(B2H6)を加えるとBSG(borosilicate glass)膜が得られる。そして、ホスフィンとジボランを加えることにより、BPSG(borophosphosilicate glass)膜が得られる。シリコン酸化膜に微少のリンを添加することにより、吸湿性を持つため、ウエーハ表面に形成すると水分の進入をブロックする働きがあり、簡単な保護膜の働きをする。また、リンやホウ素などをくわえることにより、純粋のシリコン酸化膜の場合より比較的低温で軟化しやすくなる。純粋の場合は軟化温度が1160℃と非常に高いが10%未満のリンの添加のPSG膜の場合は1000℃程度まで下がり、6.8%のホウ素を添加したBSG膜の場合は825℃まで下がる。しかし、このような大きな添加の場合は吸湿性が大きすぎるために実用的ではなく、実用的なBPSG膜としての添加量は5%Pと3%Bの場合で900℃が得られる。このように軟化温度が下げられると種々の工程を経ることにより生じる表面状態の凸凹を軟化して流れやすくなり凹凸を平坦化することが可能となる。この常圧CVDは膜の成長速度は大きいが容器内のフレークが起こりやすくゴミの原因になりやすく、表面の凹凸面に対するカバーの忠実さに欠ける(ステップカバレジ:step−coverage)。

減圧CVD(low pressure):酸化膜の場合、数10Pa以下の圧力で加熱温度が400〜500℃の低温酸化(LTO,low temperrature oxide)と700〜900℃の高温酸化(HTO,high temperature oxide)がある。LTOはSiH4とO2ガスでSiO2膜を形成し、HTOはSiH4またはSiCl2H2とN2Oガスが使われる。LTOの場合は処理温度が低いの配線などの層間絶縁膜や表面保護膜に適している。HTOによる場合の方が成長速度が遅い(3〜8nm)がステップカバレジがよい。窒化膜の場合は800℃程度でSiH4またはSiCl2H2とNH3ガスを使う。窒化膜は緻密な膜質のため酸素やその他の元素および水分の遮蔽に使われる。

プラズマCVD(plasma CVD):プラズマCVDの装置は図7−7に示されている。ブースターポンプ、ロータリーポンプで容器内を真空にし、これに反応ガスを供給し、電極に50〜400kHzの高周波電圧を加え、放電させ、反応ガスをプラズマ状態(電気的に中性な原子および分子を+イオンと電子に分離した状態)にする。このようにすることにより、反応ガスは高周波電圧からエネルギーをもらい、イオン化したり、エネルギー的に高く励起された活性な(ラディカル)反応種になり、純粋の熱反応による温度よりも、低い温度で反応しやすくなり容易に膜形成が可能になる。窒化膜の場合などはAl配線後に表面保護膜として形成する必要があるのでこの方法は適している。例えば、SiH4−NH3−N2ガスで圧力0.1〜2Torr、温度250〜400℃の条件で窒化膜が形成できる。また、酸化膜の場合はSiH4−N2Oのガスで0.1〜2Torr、温度250〜300℃で膜形成が可能である。

図7−7 平行平板形プラズマ装置

プラズマ生成:図7−8に示すように平行平板間に十分に大きな高周波電圧を加えると電極から放出された電子が大きなエネルギーをもらい電極間のガス原子およびガス分子に衝突し、原子および分子をイオン化させ、この作用がカスケード状におこり、全ガスが+イオンと電子とに分離し、プラズマ状態になる。実際には完全なイオン状態のものだけではなくいろいろなエネルギー状態の原子、分子も存在する。このようなプラズマ状態においてはイオンは質量が重く遅いため高周波電界に追随できず、電子のみが追随し電極に流れる。このような状態では電極の近傍にはイオンのみが存在する領域ができ、この領域をイオンシース(ion sheath)と呼んでいる。電位については印加電極は電子により自己バイアスーVi(ー数100〜ー数1000V)になり、プラズマ領域は全体としてイオンが多いため+Vp(数10V)になる。接地電極は0Vであるため下図に示されているような電極間の電位分布を示す。

図7−8 プラズマ生成の原理図

塗布法:ウエーハ上に有機物を回転塗布(spin coat)させる方法で例えばシラノールのように有機シリコン化合物をエタノール(ethanol)などの溶剤をウエーハ上に塗布し、温度450〜500℃で熱処理して酸化膜を形成する。このような膜は比較的厚いためウエーハ表面の製作工程中に生じた凸凹を平坦化するのに適している。また、ポリイミドの場合は保護膜や層間絶縁膜として多く使われているが、これはウエーハ上に回転塗布し、温度350℃で熱処理して使用する。

図7−9 プラズマエッチング装置

図7−10 IRE装置

図7−11 ケミカルエッチング装置

7.f ドライエッチング(dry etching)

前に薬品で絶縁膜、導電膜、シリコンウエーハなどを耐薬品で電子回路パターンが転写されたフォトレジスト通りにエッチング(腐食)する等方性のウエットエッチングについて述べたが、このドライエッチングはプラズマを使ったエッチング法で、これによると条件によっては等方性にも異方性にもすることができ、微細なパターンのエッチングも可能なので、現在ではほとんどのエッチングはドライエッチング使われている。このドライエッチングには主にプラズマエッチング、ケミカルエッチング、反応性イオンエッチングがある。

プラズマエッチング(plasma etching):プラズマエッチングは反応ガスを高周波電界で放電しプラズマを発生させ、プラズマ中のラジカル(活性)な反応種でウエーハ上の薄膜と反応させてエッチングを行なう。例えばCF4ガスで酸化膜をエッチングする場合、ラジカルなフッ素(F)がSiO2と反応し、SiF4になり、ガスとして排気される。装置は図7−9に示している。この場合のエッチングは等方性である。

ケミカルエッチング(chemical etching):ケミカルエッチングは図7−11に示すように反応ガスをマイクロ波でプラズマ状態にし、この中のラジカルな反応種を輸送管でウエーハの置いている反応容器内に導入し、薄膜をエッチングする。この場合はCF4またはCF4+O2ガスによりレジスト除去やポリシリコンのエッチングに使われている。また、レジストの場合はマイクロ波でプラズマを生成する部分の代わりにオゾン(O3)発生器を置き反応容器内でレジストと反応させてレジスト(樹脂)を灰化して除去する方法が取られる場合もある。

反応性イオンエッチング(RIE:reactive ion etching):これは図7−10に示すように、上述のプラズマエッチングと同じように反応ガスをプラズマ状態にして反応するのであるが、異なるのはウエーハの置き方が異なっている。プラズマエッチングの場合はウエーハを電気的に接地側の電極の上に置く。接地側の電極側に置くと接地電極とプラズマ間の電位差は図7−8のプラズマ原理図の電位分布で示しているように、数10Vと小さいためプラズマからのイオンの影響はほとんど無くイオンによるウエーハに対するダメージは無い。一方、反応性イオンエッチングの場合は図7−10のように高周波電源側の電極にウエーハを置く。この場合は高周波電源側の電極には自己バイアスがー数100〜ー数1000Vにもなる。このエッチング法はこの自己バイアスを積極的に利用するものである。すなわち、イオンシースの厚さのところに高い自己バイアス加わっているため、これによりプラズマ中のイオンが加速され取り除く薄膜に衝突し、これにより物理的に薄膜が取り除かれる(イオンによるスパッタリング作用)。このスパッタによるとウエーハに垂直方向にのみエッチングが進む。すなわち、異方性エッチングである。ところが、このスパッタだけではエッチング速度は遅いため実用的ではないが、表面に反応性のガスが付着しているとスパッタリングのエネルギーにより非常に反応しやすくなるためスパッタ面はエッチングが促進される。これが、反応性イオンエッチングである。

図7−12 不純物拡散の例

  (a)空孔による      (b)格子間による

図7−13 不純物拡散モデル

 

図7−14 イオン注入装置

 

    (a)2次効果          (b)格子歪効果

図7−15 2次元効果と格子歪効果

 

7.g 不純物拡散(impurity diffusion)

不純物拡散はP形シリコンの一部をN形にする場合、N形の一部をP形にする場合、前述のエピタキシャル成長(epitaxal growth)を使う場合もあるが使い方が限られるが、不純物拡散は比較的いろいろな使い方が容易なため多く使われる。不純物拡散の方法は図7−12に示すように例えばP形シリコン基板(ホウ素不純物濃度1016個/cm3)の場合一部を不純物の拡散を防ぐためにシリコン酸化膜(SiO2)で覆い、これにリンを不純物として表面から拡散させてやると表面濃度1020個/cm3でシリコン基板を拡散して行き、図に示すように深さ方向に濃度分布を示す。この場合の拡散モデルは図7−13に示すように一つの方法は単結晶内にも結晶格子の中で原子が抜けている部分があり、この抜け穴を空孔(vacancy)という。1000℃程加熱することにより、この空孔と不純物とが入れ替わりながら深さ方向に進んでいく方法である。また一つの方法は結晶格子のところにシリコン原子があるだけではなしに格子間にもシリコン原子が入る場合がある。このような原子を格子間原子(interstitial atom)という。このような格子間原子が格子に入っている不純物を押し出し、押し出された不純物は隣の原子を押し出し、また、格子上の原子が不純物に押し出されて、格子間原子になるということを繰り返し、深さ方向に拡散していく方法である。これらの複合的な場合も含めて拡散が負荷さ方向に進行していく。これらを数学的に取り扱うには拡散方程式がある。深さ方向に1次元で取り扱うと次式から得られる。一つは拡散不純物原子単位面積あたりの流れ(J)は濃度の場所的な変化による。すなわち、次式で表される。

J=−D∂N/∂x   D:拡散係数   N:不純物濃度              (7・g・1)

もう一つの関係式は連続の式というもので、濃度の時間的変化は流れの場所的変化に等しいという式で、次式で表される。

∂N/∂t=−∂J/∂x                                 (7・g・2)

以上の二つの式から次式の拡散方程式(diffusion equation)が得られる。

∂N/∂t=D∂2N/∂x2                                (7・g・3)

この式に初期条件および境界条件を与えることにより実際に不純物拡散させるときの不純物分布を求めることができる。                                                     

(1)表面で不純物濃度が常に一定量供給されるときは次式のような補誤差関数分布が得られる。     初期条件 N(x,0)=0  ;N(0,t)=Ns表面濃度  ;N(∝,t)=0

N(x、t)=Nserfc(x/2(Dt)1/2)                            (7・g・4)

ここで、 erfc:補誤差関数(complementary error function)                      

(2)表面での不純物濃度を一時的に一定量供給されるとき、次式のようなガウス分布が得られる。     初期条件 N(x,0)=0  ;N(δx,0)=Q   ; Q=∫N(x、t)dx ; N(x,∝)=0     

N(x、t)=(Q/(πDt)1/2)exp(−x2/4Dt)                     (7・g・5)

ここで、 Ns=N(0,t)=Q/(πDt)1/2    

実際に不純物拡散をするには、図7−5に示すような熱酸化炉と同じ炉を使用する。そして、拡散するときの拡散源には種々あり、液体拡散源、固体拡散源、イオン注入がある。これらの手段で不純物をまずシリコン表面に拡散源を供給することをプリデポジションと呼び、この後不純物を所望の深さまで拡散させるのがドライブインと呼ぶ。

(1)液体拡散源ーーN形シリコンにするためにリンを含んだPOCl3(オキシ塩化リン)、P形シリコンにするためにホウ素を含んだBBr3(3臭化ほう素)などがある。液体の場合は必要な蒸気圧を得られるように温度設定された容器中の拡散源に窒素をキャリアにして細かい泡状に窒素を送り込む(バブリングbubbling)方法を使う。                           

(2)固体拡散源ーー不純物原子の酸化物P2O5、B2O3、As2O3、Sb2O3を粉末にし、水や有機剤に溶かしウエーハに塗布して熱処理する方法、ホウ素の拡散で多く使われている方法はウエーハじょうに成形したBN(窒化ホウ素)をシリコンウエーハと交互に炉に置き熱処理を行なうことである。   

(3)イオン注入(ion implantation)ーー図7−14に示すような装置でシリコンウエーハ表面近傍に注入する。この装置は拡散源(BF3、AsH3など)をイオン化(As+、B+、BF2+)し、マグネット内に放出するとイオンの質量により異なる軌道をとり直角方向に曲げられる。曲げられたイオンは加速器でエネルギーを得て加速しウエーハ上に向かうがこのとき磁界でX軸、Y軸走査されてウエーハに衝突する。全容器は超高真空に保たれている。不純物が注入される深さは加速器の加速エネルギーにより決まり、一般には10〜200KeVが用いられるが更により深い拡散層を得るためには0.5〜3MeVの装置なども用いられる。このときのイオン注入量はドーズ(dose)量φで表され次式になる。

φ=Q/nqS atoms/cm2                             (7・g・6)

ここで、S:注入面積 ;   Q=∫Idt (クーロン)    I:ビーム電流 ; m:イオン価              

ビーム電流は、スループットの面から高ドーズ量が要求されるので、数10mAのものが使われる。イオン注入はビーム電流と加速電圧で深さやドーズ量がコントロールできるため拡散層のコントロールが精度が良いため非常に重要な拡散手段である。                                      

このイオン注入の場合はプリデポジション(predeposition)としても用いるが比較的容易に所望の分布で深くイオンを注入することができるため、イオン注入だけプリデポジションとドライブイン(drive−in)の二役を兼ねることができる。ただし、イオン注入のみでは注入時注入イオンのシリコンとの衝突により格子の配列が乱され、アモルファス層、空格子、欠陥や転移などが生じ単結晶が大きく乱されている。また、注入後のホウ素イオンやリンイオンがアクセプタやドナーとしての働きをしない。これらを正常な単結晶でアクセプタやドナーの働きを持たせるためには900℃以上の熱処理(アニール)が必要である。

単結晶シリコンの結晶軸に沿うてイオン注入した場合のイオンの到達する深さは結晶軸からはずれた角度でイオン注入した場合よりも非常に深くなる。この現象をチャネリングと呼んでおり、結晶軸に沿う場合は格子が深さ方向丁度重なり合い、シリコン原子との衝突が小さくなるためである。そこで、イオン注入はウエーハ面に垂直から7度ほど傾けて行なう。                              

不純物拡散を行なう場合、拡散分布は前述の拡散方程式で既述できるが、これに影響するいくつかの効果がある。これについて以下に述べる。                                   

図7−15(a)に示す2次元効果であるが、酸化膜および窒化膜をマスクに不純物拡散を行なうとき、中央部では深さ方向のみの深さ方向に1次元拡散の取り扱い出考えればよいが、マスクの端部では深さ方向と面に平行な方向の両方の拡散、すなわち、2次元拡散として取り扱う必要があり、端面に平行な方向の拡散距離は深さ方向の拡散距離より数10%短くなる。                        

次に電界効果がある。1000℃ほどのシリコン基板に不純物原子が拡散する場合は原子はイオン化しており、N形ではドナーイオンと電子、P形ではアクセプタイオンと正孔とになり拡散して行く。この場合、電子や正孔はドナーやアクセプタイオンより動きが速く先に拡散して行く。これらの電子や正孔が電気的にドナーやアクセプタイオンを引っ張りこれらの拡散を促進する。この電界効果により、実質的な拡散係数は増加する。不純物濃度が大きいほどこの効果は大きい。                          

図7−15(b)に示すような格子歪効果がある。NPNバイポーラトランジスタのベース内にエミッタを形成する時、ベースにP形不純物としてホウ素(B)拡散を行い、これにエミッタとしてリン(P)拡散を行なうが、図のようにリン拡散を行なった部分でホウ素が更に深く拡散(線B)している。これはリンの高濃度拡散によりベース直下に大きな格子の歪を作り、この歪がホウ素の拡散を促進させた結果である。        

次に酸化時における拡散の影響がある。これは酸化膜直下での不純物の拡散が不純物原子の種類により促進されたり、減速されたりする。As、B、やPの場合は促進され、Sbは減速される。Sbの原則はSbの拡散機構が空格子と関係があり、空格子が酸化膜・シリコン境界でのシリコンにより相殺されて減少し拡散されるためと思える。

7.h 導電膜形成

導電膜は電極、配線などに使いこれに使われる物質はAu(金)、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Ti(チタニウム)、Ni(ニッケル)ポリシリコン、シリサイド、ポリサイド、高融点金属(W(タングステン)、Mo(モリブデン)など)などがある。これらの形成法を以下に示す。

7.h.1 蒸着(vapor deposition)

抵抗加熱蒸着:図7−16に示すようにベルジャーの容器中を真空ポンプで真空(10-6Torr)にし、半球上の板にウエーハを支持し、裏面から加熱できるようにしておく。そして、下部にタングステン、モリブデンの高融点金属のヒーター(コイル状のもの、コニカル状のもの、板状のもの)を置き、その中に蒸着する導電物を入れる。ヒーターに電流を流し加熱し、導電物を融解させ蒸発させる。蒸発した導電物は真空中を直進してウエーハ上に堆積する。かの方法で可能な蒸着源はヒーターがタングステンであるため千数百度程度のものである。                                                  

電子ビーム加熱蒸着:抵抗加熱は高融点金属などは不可能であるが電子ビーム加熱の場合は可能になる。電子ビーム加熱は水冷された銅のるつぼに蒸着源の金属を置き、そのそばに電子ビーム発生器を置き電子ビームを金属に照射し部分的に融解し蒸発させる方法である。電子ビーム加熱時に放射線を放出するためウエーハへのダメージの可能性がある。                              

7.h.2 スパッタ

このスパッタ方式は図7−17に示すように前述のドライエッチングのところで述べたのと同じような機構である。プラズマ放電のガスとしては不活性ガスのアルゴン(Ar)ガスが使われ、ウエーハは接地電極上に置き、蒸着源は円盤状(ターゲットと呼ぶ)にして高周波電源側電極に設置する。このようにするとプラズマ中のアルゴンイオンAr+は電源側の負の自己バイアスにより高いエネルギーで衝突するこれによりターゲットの物質をたたき出す。たたき出された物質は対向するウエーハ上に蒸着される。このスパッタ法はウエーハに高いエネルギーで蒸着されるため密着度が高く、緻密な膜が得られる。反面ウエーハへのダメージも大きい。この方式でプラズマ密度を上げターゲットからより多くたたき出すため、図7−18に示すようなマグネトロンスパッタ方式がある。電源側の電極上に磁石を置き、粒子の衝突を促進し、アルゴンイオンを多く発生させ蒸着を促進させる方式である。                       

7.h.3 減圧CVD

タングステンシリサイド(WSi2)膜などに使われているが、減圧下で300〜400℃に加熱しWF6とSiH4を反応させることによりウエーハ上にWSi2を蒸着させる。この方法はウエーハへのダメージもなくステップカバレジも良い。最近は多層配線の層間のスルーホールの埋め込みなどにも使われており、多く利用されるようになった。                                             

図7−16 抵抗加熱蒸着装置

図7−17 スパッタ蒸着装置

図7−18 マグネトロンスパッタ装置

図7−19 ターボ分子ポンプ

7.i 真空(vacuum)

前述のように、ほとんどの工程に使う装置が容器を真空にして取り扱う装置が非常に多い。そこで、真空について簡単に述べる。真空の圧力として、減圧CVDなどは圧力0.1Torr程度、抵抗加熱蒸着装置に使うような圧力は10-4Pa、MBE(分子ビームエピタキシャル)に使う圧力10-8Paと広範囲の圧力にわたって使われている。当然、真空の圧力が小さいほど技術的に難しい。まず、真空にするための装置としては初期の頃から良く使われているものに、油ロータリーポンプがあり、油拡散ポンプ、液体窒素トラップなどがあった。近年はクリーンが重視されるようになり、ドライポンプ、ターボ分子ポンプが主になってきた。超高真空にスパッタイオンポンプ、ゲッタポンプ、クライオポンプなどがある。これらについて述べる。

油ロータリーポンプ(oil rotary pump):図7−20に示すように油で密封された容器内で円形の容器内で円形のローターを中心外の点を中心に回転するローターに上下運動をする摺動弁を接触させてローターの回転により引っ張り込んだ空気を排気口の方に放出することにより吸引口側を真空にする方式である。この方式で得られる真空度は105〜10-1Paの範囲である。これはほとんどが補助的な役割をする。

ルーツ形ドライポンプ(Roots dry pump):図7−21に示すように2枚の羽根が常に接触しながら回転し、吸入側から空気を取り込み排出側に空気を放出することにより真空を得る方式である。得られる真空度は105〜10-2Paで油ロータリーポンプと良く似た原理で真空を得るため、得られる真空度は良く似た領域であるが、油ロータリーポンプの方は油の影響があるため、クリーン度においてはルーツドライポンプの方が良い。

油拡散ポンプ(oil diffusion pump):図7−22に示すような形状の容器で容器の周りは水冷されている。容器の底にはヒーターがあり、油が溜められている。ヒーターで熱すると、油が蒸気になり、図のような円筒中を上昇して行き、図のように狭い出口から油の蒸気が噴出するようになっている。この噴出した油の蒸気が空気を巻き込み下部の方に空気を排出する。噴出した蒸気は水冷された容器の壁で液化し、油だめに戻るという方式である。これにより、得られる真空度は10〜10-6Paである。この方式は大気圧に近いところでは使えないため従来から油ロータリーポンプを排気側に直結して使われてきた。この方式もやはり油を使うため、クリーン度の面から現在では余り使われていない。

ターボ分子ポンプ(turbo molecular pump):図7−19に示すように固定翼と動翼とを多段に組み合わせており、動翼を高速回転(1万〜9万回転/分)し、高速回転翼に当たった気体分子に運動量を与え排気側に放出する方式である。これによる真空度は103〜10-10Paであり、この方式はクリーン度の面、広範囲の真空度から現在では非常に多く使われている。

クライオポンプ(cryopump):図7−23に示すようにヘリウム冷却により超低温(20K以下:絶対温度20度(絶対温度0度=約ー273℃)以下)に冷却板を冷却し、多くの気体を凝固させて真空度を上げる方式で、10〜10-11Paである。これは、真空度の非常に高い状態で使うと特に有効である。この方式は冷却板に気体を凝固させるため、最終的には気体の再放出が必要になる。このため、ある一定の高真空度を得た後超高真空度を得るのに有効である。

スパッタイオンポンプ、ゲッタポンプ(sputter ion pump、getter pump):これらはある一定の高真空度から超高真空度を得るのに有効な手段である。スパッタイオンポンプはイオンを発生させこのイオンで気体分子をたたき容器壁に吸着させ真空度を上げる方式で、ゲッタポンプはチタンなどを蒸発させ容器壁のチタンと共に気体分子を吸着させる方式である。これにより、真空度は10〜10-11Paがえられる。

図7−20 油ロータリーポンプ

図7−21 ルーツ形ドライポンプ

図7−22 油拡散ポンプ

図7−23 クライオポンプ

図7−24 電離真空計

真空計(vacuum gauge)

上記で真空を作る方法を示したが、この真空度を計測する必要がある。圧力の表し方としては現在ではPa(パスカル)であるが、以前はTorr(トール)が主であった。また、大気圧との比較としては気圧という単位で呼ばれる場合もあり、大気圧は水銀柱との比較で計られることもあることから、1気圧が760mHgとして計測される。また、1Torrは1mHgであり、1Paは7.5mTorrである。真空計の基本は水銀柱で大気圧との差で計測されたが、これでは1Paくらいのところまでしか計測できない。そこで、さらに真空度の高いところを計測すのに代表的なものにピラニ真空計があり、更に高真空に対しては電離真空計がある。これらについて以下に示す。

ピラニ真空計(Pirani gauge):この原理は計測ガラス管内に加熱フィラメントを置くと、管内の気体の量が多ければ多いほどフィラメントから気体が奪う熱量が大きくなり、フィラメントの温度が下がるこれにより電気抵抗が小さくなる。このように気圧とフィラメントの電気抵抗と関係により、真空度を計測する方法である。フィラメントとしては25μmの径の白金線に電流を流して200℃にしておき、これからの熱損失から真空を計測する。これにより、103〜10-1Paが計測できる。

電離真空計(ionaization vacuum gauge):これは図7−24に示すようなもので、フィラメントの加熱により電子を放出し、この電子は高い正電圧のグリッドにより加速され、管内の気体に衝突し気体分子をイオン化する。このイオンが負電極のコレクタに流れ込みコレクタ電流となる。フィラメントから飛び出した電子は一部はグリッドに流れるが、大部分はフィラメントとコレクタの間を行き来し、気体分子を有効にイオン化する。気圧が低くくなれば、イオンの数が少なくなるため計測限界ができる。これにより、10-1〜10-9Paが計測できる。これ以上の超高真空の圧力を測定する方法はいろいろ研究されているが基本はいかに微少な気体分子をイオン化し、これを増幅するかで工夫が凝らされている。

 

                                            上部へ                                                  

 

1.電気の基礎

2.電気の発生  (電池;電力発電(水力、火力、原子力、地熱、風力))

3.交流電圧、電流、電力  (交流電圧、電流、電力;受動素子;アナログ計測;インピーダンス)

4.半導体素子  (半導体の基礎[原子における電子軌道、結晶、固体内の電気伝導]、PN接合ダイオード、ショットキーダイオード、LED、レーザーダイオード、フォトダイオード、ガンダイオード、インパットダイオード、バイポーラトランジスタ、MOSFET、JFET・MESFET・HEMT、SCR)

5.集積回路  (バイポーラ集積回路の例、CMOS集積回路の例)

6.IC製造基盤  (シリコン結晶、ウエーハ製作、クリーンシステム)

7.IC製作前工程  (洗浄、ウエットエッチング、リソグラフィ、エピタキシャル成長、絶縁膜形成、ドライエッチング、不純物拡散、導電膜形成、真空)

8.IC製作後工程  (組み立て、検査、信頼性、IC環境試験、IC故障要因、評価解析)

9.電子回路(1)A:アナログA  (単一トランジスタ増幅回路、2段増幅回路、差動増幅回路、定電流電源と定電圧電源、出力段回路、演算増幅器)

10.電子回路(1)B:アナログB  (発振器、変調・復調回路)

11.電子回路(2)デジタル  (パルスの発生、積分・微分回路、論理演算回路、インバータ回路、NAND;NOR回路、フリップフロップ回路、カウンタ回路;レジスタ回路、メモリ回路、A/D;D/Aコンバータ、デジタルの基礎理論)

12.高周波回路  (電磁波、分布定数回路、導波管、方向性結合器、同軸導波管結合器、無反射終端、サーキュレータ、増幅回路、発振回路、衛星放送受信コンバータ、アンテナ)

 

                                       上部へ  

 

HOME 趣味1(旅行) 趣味2(絵画他) 趣味3(陶芸) 徒然(電気雑記)

 

 

inserted by FC2 system